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カイコ日和

カイコのように静かに生きてます。月曜日生まれです。漫画好きです。

【小説感想・評価】「死神の精度(著:伊坂幸太郎)」《81点/100点》

 

書籍の概要

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

 

 

あらすじ

(1)CDショップに入りびたり(2)苗字が町や市の名前であり(3)受け答えが微妙にずれていて(4)素手で他人に触ろうとしない——そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。1週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌8日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。解説・沼野充義

出典 文春文庫『死神の精度』伊坂幸太郎 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

 死神・千葉シリーズの一作目。死を迎える一週間前の人間を観察して、その人間が死に値するかどうか見極める職業?の死神。死に値すれば「可」、死ぬべきではないと判断すれば「見送り」と報告するのが仕事。しかしほとんどの死神はしっかりと精査せずに、やる前から「可」を出すことを決めている。そんな死神の1人である「千葉」の短篇集。

感想

 伊坂幸太郎はとにかくおしゃれ。会話にしろ、地の文にしろ読みやすさを残しつつ、ニヤリとさせる表現が多い。

 

 そして今回の「死神の精度」は設定がおしゃれ。死神という設定自体はありふれているが、その死神は力が抜けていて、空き時間にはレンタルCDショップに入り浸るというなんとも親しみやすいキャラクター。

 

 物語は千葉が対象者、すなわち一週間後に死ぬであろう人物に接触し、その人間と千葉の周りで起こる一週間の出来事だ。その物語は、ヤクザ間のいざこざであったり、片思いする男の話であったり、さらには洋館で次々と人が殺される連続殺人事件、などなど実に多種多様。

 

 死神という設定がなくても、これらの物語はそれら自体が十分おもしろい。なぜなら伊坂幸太郎なのだから。軽妙な掛け合い、魅力的なキャラクター、飽きさせない物語の描き方。

 

 しかし、この「死神の精度」が面白いのは、それらのよくできた人情もの、恋愛もの、ミステリーものが全て死神視点で書かれているところだと思う。

 

 しかもその死神の設定が不安になる。基本的に千葉は人間に興味がない。なので困っている対象者を積極的に助けたりしない。ほとんど傍観者に徹する。そんなやつが物語の語り手なので面白くなるのか心配になるが、しっかり、ちゃんと、めちゃくちゃ面白い。

 

 普通に書いても面白い多ジャンルの物語を、死神・千葉の目を介して描かれる。それによって全く違った感慨が生まれる。そういう不思議な本だ。